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Posts tagged 労働仲裁

少しずつ暑くなってきました。今日は万物節という祝日でカンボジアはお休みです。

ということで久しぶりにNNAさんの連載の紹介をさせて頂きます。

(気付いたら、19回連載のご紹介は2度目でした…)

(重要ですので、再度ご覧頂ければ幸いです!)

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今回のテーマは、労働紛争の解決(その1)です。

今回は、労働紛争が起こった際の手続について説明します。

1.事前調停

(1) 個別的労働紛争の場合

個別的労働紛争が社内における協議で解決できない場合、労使当事者は労働監督官に調停を申し立てることができます(労働法300条2項)(調停を行わずに直接裁判を行うことも可)。

ここでは、一方当事者からの要望が要望書としてまとめられ、1つずつその要望について協議が行われます。

調停の内容は、その結果にかかわらず、報告書にまとめられ(同条3項)、各当事者に交付されます。

労働監督官の面前で成立した合意書は法的拘束力を有しますが(同条5項)、調停が不調に終わった場合は、次の手続に進むことになります。

(2) 集団的労働紛争の場合

他方、当該労働紛争が集団的労働紛争(複数の労働者との間での紛争)である場合、当事者は労働監督官に当該紛争の報告をしなければならず、労働省は、当該紛争を調停に付さなければなりません(303条から305条)。

労働省は、報告後48時間以内に調停員を任命し(304条)、調停員任命日から15日以内に調停期日が開かれなければならないとしていますが(301条2項)、実際は、申立後すぐに、労働省で行われることが多いと認識しています。

調停が不調に終わった場合、調停員は報告書を作成し(308条)、その後、各当事者にも交付されます。

2.労働仲裁・裁判

(1) 個別的労働紛争の場合

事前調停が行われた場合、労使当事者は、調停が不調に終わった後2ヶ月以内に訴訟提起を行わなければならず、2ヶ月を経過した後に提起された訴訟は却下されますので(301条6項)、注意が必要です。

(2) 集団的労働紛争の場合

事前調停が不調に終わった場合、原則として労働仲裁手続がとられなければなりません(309条)。

仲裁手続中、労働者はストライキを、使用者はロックアウトを行ってはなりません(320条)。これに反する場合、仲裁委員会よりストライキ・ロックアウトの中止命令が出され、それでも継続される場合は仲裁委員会での手続が中断されます。

仲裁委員会は、事件受理後15日以内に裁定結果を労働大臣に報告しなければならないと定められており(313条)、速やかな紛争解決が予定されています。

当事者は手続開始前に合意により、仲裁委員会の判断を最終的な紛争解決手続にするか否か(BindingかNon-Bindingか)を選択することができます。

Non-Bindingの場合であっても、仲裁判断通知後8日以内に判断に対する異議申し立てがなされない限り、仲裁判断は確定し、拘束力を有することになります。

その他詳しくは、NNAさんでのカンボジア・ビジネス法19回連載(タイ版:2015年4月8日付)で書かせて頂いていますので、詳しくは下記リンクをご参照下さい。

(カンボジア・ビジネス法講座 第19回 PDFファイル)

色々な書き物が終わり、一連の大型連休も終わって少し余裕ができましたので、会社として色んな企画を考えています。

その一つとして、労働仲裁裁定のデータベースを作成しようと思っています。

今日は一回目として、2015年15号 W&D (Cambodia)事件をお届けします。

 

■労働者側の請求(の一部)

1.無期労働契約を半年又は1年の有期雇用契約に変更せよ(争点1)

2.出産休暇期間中の手当を出産休暇取得前に支払え(争点6)
 

■労働仲裁委員会の判断

1.労働者側の請求を棄却する

2.使用者は、出産休暇取得日の1日以上前に、該当する労働者に対して、出産休暇期間中の手当を支払え
 

■判断理由

・争点1について

(1) 前提知識

有期労働契約の場合、理由の如何を問わず、使用者は契約終了時に労働者に対して、退職金(これまでに支払った賃金等の合計額の5%相当額)を支払わなければなりません(労働法73条6項)。

他方、無期労働契約の場合にも、労働者は契約終了時に解雇補償金(最大6ヶ月分の賃金等相当額)を受け取ることができますが、労働者都合で辞めた場合、労働者の重大な企業秩序違反行為に基づく解雇の場合にはこれを受け取ることができません(労働法89条1項)。
ですので、「有期労働契約の方が有利だ」という労働者は少なくありませんし、最近では日本企業のお客様には、無期労働契約をお勧めすることも少なくありません。

また、本件において、労働者は、契約終了時に使用者が行わなければならない、「未使用有給の買取」を契約条件変更(有期→無期)の理由に挙げています。

労働法は、契約期間中の有給買取を禁じていますが(労働法167条3項)、逆に、契約終了時には、使用者に対して有給の買取義務を課しています(同条2項)。

(2) 判断理由

契約条件の変更には、原則として当事者双方の合意が必要であり、一方当事者の意思のみによってこれを変更ができない、という理由で契約内容を変更せよという請求は棄却されました。
*本件は前提事実が大事なので判断理由に紙幅を割かせて頂きました。

・争点6について

(1) 前提知識

これについても前提知識として、妊娠した女性労働者は、出産の前後に合計90日間の出産休暇を取得することができます(労働法182条1項)。

その上で、勤続1年以上の女性従業員は出産休暇期間中、通常の賃金等の50%相当額を手当として受け取ることができます(労働法183項1項)。

(2) 前提事実

本件使用者は、女性労働者が出産後、出生証明書を提出することを条件に上記手当を支払うという運用を行っていました。

(3) 判断理由

労働法及び労働省令は、上記手当の支払時期を規定していません。

そこで、「使用者は、出産期間取得の1日以上前に手当を支払え」との過去の裁定判断を引用し、上記本件使用者の運用は女性労働者の権利を害すると述べた上で、上記判断を導きました。

出産休暇期間中の手当の支払時期という比較的重要な内容かと思いますので、参考にして頂けると幸いです。

世間では最近暑くなってきたというウワサを耳にしますし、パソコンの温度計は38℃とか40℃を表示しているんですが、僕はほとんど部屋に籠りっきりなので、全く季節の変化を感じません(汗)

というわけで、4月のカンボジアは夏真っ盛り(らしい)です!

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今日は、(4月、4月と言いながら、)最近アップされた3月分のニュースレターを紹介させて下さい。

3月のニュースレター(カンボジア版)では、ナガ・ワールド事件を紹介しています。
 

労働仲裁委員会は同事件において、

・解雇の相当性の判断方法

・解雇が不当であった場合おいて、解雇された労働者が望んだ場合は当該労働者を再雇用しなければならない

・再雇用が認められた場合には同時に不当解雇時から再雇用時までの賃金相当額が損害賠償金として認められうる

・不当解雇された労働者は再雇用又は解雇補償金と同額の損害賠償の請求のいずれかを選択的に請求できる

ことについて判断しています。

本裁定において、カンボジアにおいても解雇に高いリスクがあることが明らかになっており、非常に高い重要性が認められる裁定であると思われます。

詳しくは、下記PDFファイルをご参照下さい。

(JBL最新カンボジア法務事情 PDFファイル)