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色々な書き物が終わり、一連の大型連休も終わって少し余裕ができましたので、会社として色んな企画を考えています。

その一つとして、労働仲裁裁定のデータベースを作成しようと思っています。

今日は一回目として、2015年15号 W&D (Cambodia)事件をお届けします。

 

■労働者側の請求(の一部)

1.無期労働契約を半年又は1年の有期雇用契約に変更せよ(争点1)

2.出産休暇期間中の手当を出産休暇取得前に支払え(争点6)
 

■労働仲裁委員会の判断

1.労働者側の請求を棄却する

2.使用者は、出産休暇取得日の1日以上前に、該当する労働者に対して、出産休暇期間中の手当を支払え
 

■判断理由

・争点1について

(1) 前提知識

有期労働契約の場合、理由の如何を問わず、使用者は契約終了時に労働者に対して、退職金(これまでに支払った賃金等の合計額の5%相当額)を支払わなければなりません(労働法73条6項)。

他方、無期労働契約の場合にも、労働者は契約終了時に解雇補償金(最大6ヶ月分の賃金等相当額)を受け取ることができますが、労働者都合で辞めた場合、労働者の重大な企業秩序違反行為に基づく解雇の場合にはこれを受け取ることができません(労働法89条1項)。
ですので、「有期労働契約の方が有利だ」という労働者は少なくありませんし、最近では日本企業のお客様には、無期労働契約をお勧めすることも少なくありません。

また、本件において、労働者は、契約終了時に使用者が行わなければならない、「未使用有給の買取」を契約条件変更(有期→無期)の理由に挙げています。

労働法は、契約期間中の有給買取を禁じていますが(労働法167条3項)、逆に、契約終了時には、使用者に対して有給の買取義務を課しています(同条2項)。

(2) 判断理由

契約条件の変更には、原則として当事者双方の合意が必要であり、一方当事者の意思のみによってこれを変更ができない、という理由で契約内容を変更せよという請求は棄却されました。
*本件は前提事実が大事なので判断理由に紙幅を割かせて頂きました。

・争点6について

(1) 前提知識

これについても前提知識として、妊娠した女性労働者は、出産の前後に合計90日間の出産休暇を取得することができます(労働法182条1項)。

その上で、勤続1年以上の女性従業員は出産休暇期間中、通常の賃金等の50%相当額を手当として受け取ることができます(労働法183項1項)。

(2) 前提事実

本件使用者は、女性労働者が出産後、出生証明書を提出することを条件に上記手当を支払うという運用を行っていました。

(3) 判断理由

労働法及び労働省令は、上記手当の支払時期を規定していません。

そこで、「使用者は、出産期間取得の1日以上前に手当を支払え」との過去の裁定判断を引用し、上記本件使用者の運用は女性労働者の権利を害すると述べた上で、上記判断を導きました。

出産休暇期間中の手当の支払時期という比較的重要な内容かと思いますので、参考にして頂けると幸いです。